私たちは環境保全や環境配慮を考えるとき、正直なところ、すべてに明確な数字や理由、根拠を用意できているわけではありません。それでも「これはやった方がいい」「この選択の方が、たぶん未来にとって健全だ」。そんな直感に近い感覚で、行動を選んでいる場面が多くあります。
一方で、「それは本当に正しいのか?」「理由や根拠を説明できないまま進めるのはどうなのか?」という意見があるのも、現実です。
ニュージーランドで感じた、自然との“距離感”
私がニュージーランドに来て、登山やハイキング、海遊び、そして日常生活を送る中で、とても印象的だったのが、人と自然との向き合い方でした。
たとえば、
- 登山道に入る前に、靴を消毒する
- 山や川に「人格」が与えられている
- 外来種の持ち込みや拡散を徹底的に防ぐ
- 野鳥を守るためのルールが、生活の中に溶け込んでいる
- 海外から来る人の靴の裏まで、当たり前のようにチェックする
最初は、「ここまでやるんだ」と驚くこともありました。でも不思議と、押しつけられている感じがしない。むしろ、とても自然で、静かで、誇りがある。「素晴らしいな」と感じると同時に、どうして、こんな向き合い方が社会全体に根づいているのだろう?という疑問が生まれました。
その問いを辿っていく中で、出会った言葉がニュージーランドで大切されている「kaitiakitanga(カイティアキタンガ)」という先住民族マオリの人たちが受け継いできた概念です。
環境問題は、そもそも“説明しきれない”
環境問題を本気で考え始めると、すぐに気づくことがあります。それは、要素があまりにも多く、複雑に絡み合っているということ。水、土、微生物、植物、動物、気候、時間。そこに人間の活動が加わり、何が原因で、何が正解なのかを完全に説明することは、ほぼ不可能に近い。そもそも私たち人間は、自然界に存在するすべての因子や要素を
理解しきれていません。理解しきれていない存在が、「完全な根拠」や「絶対に正しい理由」を求め続けること自体、
どこか無理があるのではないか。そんなふうにも感じます。
不完全な理由は、ときに間違った判断を生む
根拠や数字を求めること自体は、とても大切な姿勢です。ただし、不完全な理解の上に積み上げた理由や根拠は、
ときに“正しそうに見える間違い”を生むこともあります。短期的には合理的でも、長い時間軸で見たときに、自然のバランスを崩してしまう判断。環境問題の難しさは、そこにあるのだと思います。
「kaitiakitanga」 という、立ち戻る場所
そんな中で、「kaitiakitanga」 という考え方に触れると、とても救われる感覚があります。それは、すべてに理由や根拠を求めきらなくてもいい、という“拠り所”が、最初から用意されているという点です。「kaitiakitanga」 は、自然をどう管理するか、ではなく、自然とどう関係を結び続けるかを示した体系的な考え方。そしてそれは、マオリの人たちにとって思想というよりも、信仰に近い、絶対的な軸なのだと思います。
日本の八百万の精神との重なり
この考え方に触れていると、日本の八百万の精神を思い出します。山や川、木や岩に神が宿るという感覚。
自然を支配するのではなく、共に生きる存在として敬ってきた姿勢。本来、日本人もkaitiakitanga にとても近い精神性を持っていたはずです。けれど、西洋的な合理性や効率性、数字や理屈を重視する考え方を急速に取り入れてきた中で、その精神性を、少しずつ置き去りにしてしまった部分もあるのかもしれません。
説明できること、
測れること、
そして、証明できること。
これらが優先されるあまり、説明しきれないけれど、大切だった感覚を忘れかけているようにも感じます。
共有された価値観が、同じゴールへ向かわせる
ニュージーランドで感じる心地よさは、「kaitiakitanga」 という考え方が社会全体で共有されていることにあるのだと思います。一人ひとりがゼロから理由を説明しなくても、「それは『kaitiakitanga』に反しないか?」という共通の問いに立ち戻れる。細かな意見の違いがあっても、向かうゴールは大きくズレない。
これは、正解が見えにくい環境問題において、とても強く、しなやかな仕組みだと感じます。
peace organic が大切にしたい姿勢
peace organic もまた、すべてを数字や理屈で説明しきることより、自然との関係が壊れない選択かどうかを
大切にしていきたいと考えています。それは楽をしたいからではなく、人間の理解が不完全であることを、きちんと受け入れた上での態度です。完全に説明できなくても、未来に引き渡せる選択かどうか。「kaitiakitanga」 のような体系化された考え方が示してくれるのは、その問いを忘れないための軸なのだと思います。
Team peace organic














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