「使い心地はイマイチ、というイメージを覆すオーガニックシャンプー」

大学ではバイオサイエンス(生化学・有機化学など)、大学院ではマテリアルサイエンス(材料科学・生体材料など)を学び、ザナチュラルラボラトリー株式会社で約25年にわたり化粧品づくりに携わってきた服部珠美さん。スキンケア、ヘアケア、ボディケアといった基礎化粧品の処方設計から、工場での量産を見すえた工学的な視点まで。分業が進む大企業とは対照的に、「フォーミュレーター(化粧品開発者)」として、ものづくりの最初から最後までを一気通貫で見てきた人です。
肌を健やかに保つための処方設計というサイエンスと、香りやテクスチャーといった感性のデザイン。その両方を行き来しながら、「使う人がハッピーになる製品」をつくること。peace organicの多目的シャンプーも、そんな服部さんの視点と経験から生まれました。

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化粧品って、成分表だけを見ても、その良さは分かりません。最後の最後は、やっぱり「使ったときにどう感じるか」がすべてだと思っています。peace organicの多目的シャンプーでも、一番こだわったのは使用感でした。

長く続くうるおいと、「ヌルヌルしない」心地よさ

オーガニック処方のシャンプーは、どうしても泡立ちが弱くなりがちです。でも、泡立ちが物足りないと「ちゃんと洗えているのかな?」と不安になりますよね。

今回の処方では、一般的なシャンプーと遜色ないくらいの豊かな泡立ちを確保しつつ、その泡が「やさしい」ことにも気を使いました。洗っている最中から、お風呂場全体にみずみずしい香りがふわっと広がる。洗い流した後も、肌や髪に自然なうるおいが残る。

一方で、市販のシャンプーの中には、成分の構造上どうしても「ヌルヌル感」が強く出てしまうものもあります。床が滑りやすくなってしまったり、バスタオルで拭いたあとに、意外と肌が乾いてしまったり。

peace organicのシャンプーでは、そのあたりのバランスをとても慎重に設計しました。長時間うるおいは続くけれど、イヤなヌルつきは残さない。お風呂上がりに「あ、ちょうどいいな」と感じてもらえる、自然なしっとり感を目指しています。

 1本で完結しつつ、「足し算ケア」もしやすいように

コンセプトとしては、「これ1本で全身を洗える」多目的シャンプーです。

シャンプー、ボディソープ、洗顔料を別々に持ち歩かなくていい、というのはサウナやアウトドアでも大きなメリットですよね。ただ、人によっては「もっとしっとりさせたい」「毛先だけはオイルも使いたい」といったニーズもあります。

そこで、peace organicのシャンプーは、「足し算ケア」との相性も意識して設計しました。市販のコンディショナーやトリートメント、手持ちのヘアオイルなどをあとから足しても、ケンカしにくいような処方バランスにしてあります。ベースのシャンプーが地肌の状態を少しずつ整えてくれることで、だんだんと「アイテムを増やさなくても済む」方向に近づいていく。でも必要なときには、今お持ちのアイテムを自由に足してもらえる。そんな柔らかい関係性をイメージしています。

オーガニックと機能性、そしてコストの話

オーガニック認証には、当然ルールがあります。

COSMOS ORGANICやUSDA Organicのようなオーガニックの規格では、「全体の何パーセントはオーガニック原料を使うこと」といった決まりがあるので、まずはそこを起点に処方を組み立てます。

頭の中で、全体を100パーセントの箱としてイメージしてみてください。そのうち、たとえば何十パーセントかは「オーガニック原料枠」としてあらかじめ埋めてしまう。残りの余白で、洗浄力や泡立ち、うるおい、安定性といった機能性を組み立てていく。

ここでどうしても出てくるのが、コストの問題です。中身(インナービューティー的な意味での中身)にこだわればこだわるほど、原価は高くなっていきます。

そこで調整弁として効いてくるのが、香りの種類や使い方です。たとえばローズ系の精油はとても高価ですが、柑橘系なら、オーガニックでも比較的コストを抑えやすい。しかも柑橘は性別や年齢を問わず受け入れられやすい香りでもあります。

peace organicでは、そうした素材ごとの特性を踏まえながら、
・オーガニック原料比率
・使用感
・持続可能性(環境や人へのやさしさ)
・コストバランス
を、何度も行き来しながら最適なポイントを探っていきました。

甘夏果皮水がつくる「香りの奥行き」

その中で、私自身も「これは面白いな」と感じたのが、甘夏果皮水(甘夏の芳香蒸留水)の役割です。

peace organicのパッケージには「レモンマートルの香り」と書かれています。表面的に感じる、あのすっきりとした柑橘の香りは、たしかにレモンマートル精油が担っています。

でも、香りって直線的な一本の線ではなく、もっと立体的なんですよね。最初にパッと立ち上がる香りがあり、そのあとから全体を包み込むようにふわっと残る香りがある。実は、甘夏果皮水は後者の「まろやかさ」と「奥行き」を担当しています。

開発の途中で、甘夏果皮水を入れ忘れた試作品をたまたま作ってしまったことがありました。そのサンプルを使ってもらったときに、「なんだか香りの奥行きが違う」とコメントをいただいたんです。自分でも改めて嗅ぎ比べてみると、たしかに違う。レモンマートルだけの処方だと、スッと一直線に飛んでくる感じはあるものの、後ろ側の丸みや余韻が弱いんですね。

そこに少しだけジンジャーの精油をアクセントとして加え、甘夏果皮水を組み合わせることで、
・最初に明るく立ち上がるレモンマートル
・ほんのりビターに締めるジンジャー
・全体をまろやかにまとめる甘夏果皮水

という、三層構造のような香りになっていきました。

この甘夏果皮水自体も、本来は廃棄されるはずだった甘夏の皮を活用した、いわばアップサイクル素材です。これまでゼロ円で捨てられていたものが、新しい価値を生み出し、しかも化粧品の香りに独特の奥行きを与えてくれる。生産者の方が「こんな形で使ってもらえるなんてうれしい」と言ってくださったのも、とても印象的でした。

パッケージだけを見ると、どうしてもレモンマートルが主役に見えます。でも裏側では、甘夏果皮水がそっと全体を支えている。そういう「表には出にくいけれど、実は大事な仕事をしている原料」があることも、peace organicの多目的シャンプーの面白さだと思っています。

誠実につくったものが、最初に届いた人のこと
そして最後に、peace organicのシャンプー完成後に印象的だったことあります。

このシャンプーが製品化されたとき、最初に使ってくださったのは、甘夏果皮水をつくってくれたオレンジ農家さんでした。その農家さんが「自分が育てた柑橘の香りが、こうやって返ってくるなんて」と、使い心地と香りにとても感動されていたんです。

誠実につくられたものが、人を介して、また別の形で戻ってくる。peace organicの製品は、そんな循環まで含めて完成するものなんだと思っています。

ザナチュラルラボラトリー株式会社 服部珠美

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